お知らせ
令和5年度シンポジウム「居場所での育ちあいを今後も持続するために~取り組みへの伴走者を求めて~」実施報告
2024.01.22
11月12日(日)、琉球大学文系講義棟215教室において、「居場所での育ちあいを今後も持続するために~取り組みへの伴走者を求めて~」というタイトルのもと、令和5年度子どもの居場所学生ボランティアセンターシンポジウムを開催しました。
学生や居場所からの発表では、子どもと学生双方にとっての育ちあいとなる、居場所での活動状況が伝えられました。その後、社会問題に対する企業の取り組み、マスコミによるデータをもとにした発表、学生・居場所・企業・行政・マスコミによる広い視野でのディスカッションから、持続性のある仕組みづくりとしての要点が示されました。
また本シンポジウムでは、寄附金の不足状況を伝え、謝金の重要性や事業意義について参加者に理解いただき、支援者を増やすことも目的としました。
はじめに、当センターの委託元である沖縄県子ども未来政策課 寺本課長より開会のご挨拶をいただきました。その中で、各市町村との連携により〝沖縄こどもの貧困緊急対策事業″を推進するにあたっての連携機関へのお礼とともに、本シンポジウムに対して「それぞれの立場からの意見交換により、持続的な仕組みづくりと、皆様の当事者意識につながれば」との言葉が述べられました。
琉球大学3年次 比嘉楓さんは、中高生相手の定期活動と、宮古島での離島派遣体験について報告しました。比嘉さんは活動する居場所を決めるにあたり、支援の必要度の高さを優先したとのこと、馴染みの無い地域性に慣れることに苦労しながら、難しい年ごろの子どもたちの対応に工夫を重ね、今は居場所の子どもたちにとって〝なくてはならない存在″となっています。活動の中では〝尊敬するところをみつける″〝一人の人間として向き合う″ことを大切にしており「自分自身の成長や、子どもたちの大切な場面に寄り添えることがやりがいです」と話してくれました。
宮古島市サシバ教室 屋嘉比邦昭 代表は、生き生きとした表情の子どもたちの写真を展開しながら、一人に一冊ずつ〝マイ参考書″を本屋で選ばせたエピソードや、日ごろの食事提供で意識していることなど、子どもたちの心の土台作りに向けた居場所での取り組みについてご報告されました。はじめは警戒していた子どもたちも、大家族のような雰囲気の中で過ごすことで、安心して少しずつ学習意欲をみせるようになるとのこと、「誰かが寄り添うことが子どもたちにとって一番効果的です」と、学生ボランティアの存在意義を強調していただきました。
沖縄工業高等専門学校専攻科2年次の山城翔さんは北部地区の名護子ども食堂での活動について報告しました。山城さんは、授業の一環で参加したことをきっかけに面白さを知り、その後も活動を継続しているとのことです。東京学芸大学の学生とのオンライン学習支援や、地元企業との共同商品開発により地元のスーパーで販売を行うユニークな取り組みについて、また、活動を通して培ったコミュニケーション能力が就職活動に活きた実感を話してくれました。
八重瀬町社会福祉協議会シーちゃんきっず食堂の川武世志郎ソーシャルワーカーは、社協の受託による運営ならでは、多方面からスピード感を持って対応できるという、居場所の強みについて触れ、また長年ボランティア学生を受け入れている立場から「子どもへの対応に自信が無くて落ち込む学生もいるけど、落ち込む必要は全く無くて、学生さん一人一人が本当に良いものを持ってます」と、温かいエールを送って下さいました。川武さんが制作された居場所のPR動画では、通うことで子どもたちがどのように変化していくのかリアルに伝わり、来場者をくぎ付けにしました。
企業発表として、日本トランスオーシャン航空 下田悦子 価値創造部副部長より、地域貢献活動の取り組みについてご報告がありました。設立当初からの企業理念や、サスティナブルな活動として人流、物流、商流に活かしていく「結∞ACTION(ユイアクション)」の様々な事例、また、離島派遣のために毎年いただいている航空券の寄附について「地域にとって本当に必要なものだからこそ継続した寄附につながっており、地域課題解決に微力ながら力になれればと、感謝の気持ちで携わっております」との言葉をいただきました。
後半パネルディスカッションの冒頭では、琉球新報社 黒田華さんより、2016年から継続して実施される貧困問題に関連した調査データの詳細と、そこから見えてくる実状についてご報告をいただきました。別途、子ども未来ランチサポート利用者対象に実施したアンケートには「食に関する困窮度がショッキングな数字として表れている」とのこと、さらに他県と比較して、沖縄では低い所得の中で子育てをしている実情があり、〝支える側″自身の余裕の無い状況や、数年にわたる活動の中で‶支援疲れ″も生じていることについて触れました。また、行政との制度設計や居場所への資源の提供といった、お世話役となるハブ機能の重要性について示していただきました。
パネルディスカッションでは、本村真センター長の進行のもとで、前半の各発表をもとにした活発な意見交換が行われました。受け入れる居場所側の認識として、学生に対するフィードバックや、各機関と〝つながる力″の重要性について言及がありました。また、学生や寄附者にとっては、自分のアイデアが反映されることも支援を行う上でのモチベーションとなり、成果のフィードバックとともに「一緒に考えてください」という形で巻き込んでいく地域・仲間つくりが、持続性のポイントとなることが示されました。さらに、行政の視点として人材育成の観点から、当センターが行う事業の重要性について改めて確認されました。
来場者アンケートでは「学生の実体験に基づく発表は説得力があった」「問題意識がピンポイントで聞きやすいディスカッションだった」「支援疲れという言葉は重く響いた」「継続への課題が具体的にわかった」等のご意見をいただきました。
ご来場いただいた皆様、zoomによりご参加いただいた皆様、ありがとうございました。今回の開催を活かして今後の事業の充実へつなげていきたいと思います。
◆令和5年度 子どもの居場所学生ボランティアセンターシンポジウム
「居場所での育ちあいを今後も持続するために ~取り組みへの伴走者を求めて~」
開催日時:令和5年11月12日(日)13:30-16:00
会場:琉球大学文系講義棟 215大講義室
参加内訳:申込59名、参加者45名(オンライン参加16名)
参加所属:学生、居場所運営者、沖縄統合医療学院、沖縄県ユネスコ協会、教育振興会、市町村教育委員会、市町村役場、社会福祉協議会、寄附者、民生委員、銀行職員、県職員、内閣府、沖縄県共同募金会、税理士法人、ソーシャルワーカー
司会進行:松村葉子
<内容>
・挨拶/沖縄県子ども未来政策課 寺本美幸課長
・本日の進行説明・ボランティアセンター概要 松村葉子コーディネーター
・学生発表①/琉球大学人文社会学部3年次 比嘉楓氏
・居場所発表①/サシバ教室 屋嘉比邦昭代表
・学生発表②/沖縄工業高等専門学校2年次 山城翔氏
・居場所発表②/八重瀬町社会福祉協議会シーちゃんきっず食堂 川武世志郎氏・古波津恵美氏
・企業発表/日本トランスオーシャン航空株式会社 価値創造部副部長 下田悦子氏
・パネルディスカッション/ファシリテーター:本村真センター長 /参加者:黒田華氏(琉球新報社)、寺本美幸課長(沖縄県子ども未来政策課)、屋嘉比邦昭代表(居場所)、比嘉楓氏(学生)
・閉会の言葉